圧迫面接 企業にとって有効か

 3月に入り、就職活動も中盤へ差し掛かりました。いよいよ「面接」へ挑む就職活動生が増え始めました。近年、就職活動生を悩ませる種の一つとして、「圧迫面接」が挙げられます。圧迫面接とは、「うちの会社は激務だけど本当に大丈夫なのか」、「君はうちの会社に合っていないと感じるが、どう思うか」などと、わざと否定的、威圧的な質問を投げ掛け、それに対する学生の応答や対応をみる面談手法の一つです。以下、実際に内定塾に通う就職活動生が体験した実例をご紹介いたします。

 例)女子学生Aさん:大手ホテル会社の最終選考。1次選考から4次選考までは、集団面接が続いた。面接官も若手社員から人事部長まで様々であったが、ホテルのイメージ通り、温厚で穏やかな社員ばかりであった。そしていよいよ迎えた最終個人面接。面接官はホテルを統括している総支配人と副支配人の2名。

 入室するなり、「君は全くうちのホテルに向いていない」と怒鳴られ、そこから約30分間起立したままの状態で面接が行われた。「粘り強い努力を継続出来ます」と述べた自己PRに対し、「その強みはうちの会社には役立たない」と返される。また、志望動機を述べた際も、「やる気だけあっても、意味は無い」などと、とにかく答える質問全てを否定され続けた。最終的には、「今からでも遅くないので、他の会社へ行く事をお奨めするよ」とまで言われてしまった。

 このように、社会人でさえ萎縮してしまうような面接が実際に行われているのです。しかし、実は先ほどの話には続きがあります。Aさんは、過度な圧迫面接を受けた上記のホテル会社から内定を獲得したのです。その後、内定者懇親会へ出席したところ、最終選考時の面接官であった総支配人から以下のようなお言葉を頂いたのです。

 「今、ここに集まっている皆さんは、私からの意地悪で悪質な質問に耐え抜いた方々という事ですね。社会人になると、様々な場面で理不尽なクレームやお叱りの言葉を頂く機会が増えます。その時に皆さんはどのような応対を行うのか、この部分を今回の最終面接を通じて確認させて頂きました。」

 つまり、人事担当者は、学生1人1人のストレス耐性や、理不尽な場面での冷静な対応、頭の回転などを確認する手段の一つとして、「圧迫面接」を使用しているのです。近年、入社しても、わずか数ヶ月で退職してしまう新入社員が問題視されている中、入社前の段階でストレス耐性の見極めを実施出来るという点では、企業側にとって、「圧迫面接」の使用はメリットのように思えます。

 しかしその一方で、この「圧迫面接」がきっかけで、対人恐怖症や就活うつを発症してしまう就職活動生が実は年々増加しているというケースも散見されます。また、圧迫面接を乗り越え、せっかく内定を獲得したものの、「あんなひどい対応をされてまで、入社したくない」と内定を辞退する、といったように会社のイメージダウンに繋がる可能性も少なくありません。「ストレス耐性」を図るものさしとして、「過度な圧迫面接」が果たして本当に有効的な手段であるのか、あるいは「圧迫面接」に代わる他の手段は無いのか、面接選考のピークを迎えた今こそ、検討する必要があると考えます。(内定塾講師:川尻早貴)

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