エスカレーター規制 駅で違い

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 駅のエスカレーターで片側を開けて、急ぐ人が歩く--。都市部で常識化しているこの慣行について、エスカレーター業者などが「事故のもととなり危険」として、止まって乗るよう呼び掛けている。業者の調査によると、高齢者の約3割が、エスカレーターでの転倒に不安を感じ、歩行をやめてほしいと考えていた。だが、片側開けをマナーと考える乗客も多く、3大都市圏で運行するJRと主な私鉄・地下鉄23社に「片側開け」への対応を尋ねたところ、歩かないよう明確に呼び掛けている社は11社にとどまった。



 6日朝の都営地下鉄大江戸線新宿駅ホーム。改札口につながるエスカレーターの右側のレーンを、大勢の客が歩いて上り下りする一方、左側は立ち止まって乗る人が長蛇の列を作っていた。都市部でよく見られる光景だ。

 だが、エスカレーターは本来、歩く前提で設計されていない。国土交通省によると、標準的なエスカレーターの傾斜は30度で、駅構内の階段(26~27度)より急。ステップの高さも20センチ程度と、階段(15~16.5センチ)より高い。

 ビル施設の管理業務を手がける三菱電機ビルテクノサービスが昨年、全国の60~84歳の男女を対象にエスカレーターの乗り方に関するインターネット調査で「安心してエスカレーターを使うための要望」を尋ねたところ、「エスカレーターでの歩行を禁止してほしい」の回答が33%と最多だった。同社は「高齢化社会に合った安全な利用法を伝える必要がある」と話す。日本エレベーター協会は「歩いたり、走ったりしないで」と注意喚起する。

 しかし、多くの鉄道会社は「手すりを持って」(南海電鉄)など、止まって乗るよう遠回しに呼び掛けるにとどめている。

 かつては鉄道会社自身、積極的に片側開けを勧めていた。1967(昭和42)年、阪急電鉄が梅田駅(大阪市北区)にエスカレーターを設置した際「歩いて上り下りする方のために左側をお開けください」と放送したのが広がったという。そのためか、利用客の多くは片側開けを「マナー」と考えている。鉄道の相互乗り入れなどに伴い長いエスカレーターが増え「急ぐ客は長い間立ったまま乗っていられない」(鉄道会社関係者)という事情もあるようだ。

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 エスカレーターを利用する人々の声はさまざまだ。

 さいたま市大宮区の元会社員、上原丘(たかし)さん(52)は、91歳の父親に付き添い外出する時、駅のエスカレーターで苦労する。足元がおぼつかない父のため、できれば横に並びたいが、歩く人のために右側を開け、後ろに回るしかない。「駆け上がっている人と体がぶつかり、転倒しそうになったこともある」と嘆く。

 2歳の長男を連れてエスカレーターを利用する東京都の会社員女性(30)も「前後で手をつなぐしかなく、子どものとっさの動きに対応できない」と話す。

 一方、福岡県大野城市の会社員(43)は、福岡市まで約1時間かけて電車通勤しているが、仕事が忙しく、早めに出社しなければならないことも多い。「余裕がないと、流れに従ってついエスカレーターを歩いてしまう」と語る。

 大阪ガス行動観察研究所の松波晴人(はるひと)所長(人間工学)は、エスカレーターを歩く人の心理について「人間は『得する』ことより『損しない』ことを重視する。『前の電車に乗れず損した』という感情は強烈。『歩くな』と正論を説かれても納得できない」と指摘する。

 しかし、東京都身体障害者団体連合会の宮沢勇会長は「エスカレーター歩きが、高齢者や障害者など多くの交通弱者を危険にさらしていることに気付いて」と、鉄道会社の積極的な取り組みを求めている。【太田圭介、中村かさね】

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 エスカレーターの「片側歩き」に関するご意見をお待ちしています。メールの件名を「エスカレーター」として、kurashi@mainichi.co.jpへ。


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