大手行決算 高水準も本業課題

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 大手銀行5グループの13年3月期連結決算は軒並み最終増益となったが、国債価格の上昇(金利は低下)を背景に、債券の売買益に頼る構図が続いている。一方で、企業への貸し出しなど本業の収益改善は道半ば。足元では長期金利が急上昇(債券の価格は下落)するなど、金融市場の環境が逆風に転じかねない状況で、市場の変動で収益が大きくぶれないような構造に転換できるかが、引き続き課題となる。

 業績改善をけん引したのは、金融市場の好転による株高と債券高の同時進行だ。債券市場では、日銀の金融緩和期待から国債の価格が上昇(金利は低下)し、安値で購入していた国債の売却益などが増えた。債券売買収益は5グループで7377億円と、前期から600億円程度増加。三菱UFJとみずほ、りそなの売買収益は2ケタ増となった。

 株高も、銀行経営の重しとなっていた保有株式の減損による損失を圧縮するとともに、投資信託などの販売を底上げする。株式の損失は5グループ合計で2371億円となり、前期のほぼ半分まで圧縮。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など3メガバンクの12年度下期(12年10月~13年3月)の投資信託販売額はそろって前年同期から倍増し、手数料収入を押し上げた。平野信行社長は「年初からの株式相場好転で、個人客への金融商品の販売が増えている」と語った。

 それにもかかわらず、本業のもうけを示す業務純益の改善は限定的で、みずほを除く4グループが減益だった。低金利が続き、貸出金利回りから預金利回りを差し引いた利ざやは3メガとも前期から縮小、一段と利益が出にくい体質になった。融資など資金運用のもうけを示す資金利益は、三菱UFJで前期比1・3%減の1兆8168億円、みずほも同1・1%減少。三井住友FGの宮田孝一社長は「設備投資などが伸びている感じがない」と話し、企業の資金需要は伸び悩んでいる。

 5グループでは唯一、みずほの業務純益が16・2%伸びたが、傘下の銀行が今年7月に合併するのを控え、管理部門を共通化するなどしてコスト削減を図った効果が大きい。みずほFGの佐藤康博社長は「国内の貸し出し需要を自ら掘り起こしながら資金投入する」と強調。各行とも環境エネルギー関連などの成長産業への融資を増やし、金融市場に左右されない経営体質への転換を急ぐ考えだ。

 国内銀行が保有する債券残高が昨年9月末に213兆円に上る中、収益源だった国債が経営の一大リスクに転じる可能性もある。15日には長期金利が一時、0・920%と、約1年1カ月ぶりの高水準まで上昇。金利が上昇すれば、債券を売買する際の価格は下落する仕組みで、日銀の試算では、長期金利が1%上昇すれば、大手行で計3・2兆円、地域金融機関で計3・4兆円の評価損が発生、銀行の利益を吹き飛ばす。三菱UFJFGの平野社長は「(日銀には)市場との対話を重視しながら安定化を進めてほしい」と述べ、長期金利の急変動を抑える金融政策運営を求めた。【工藤昭久、高橋慶浩】


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