アセス新基準 石炭火力推進へ

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 政府が石炭火力発電所の新増設推進にかじを切った。新増設に必要な環境影響評価(アセスメント)の審査期間を現行の3年から、新増設は2年強に、建て替えは1年強にそれぞれ短縮する新基準を先月26日に発表。原発長期停止に伴う火力燃料費の増加が電気料金を上昇させる中、発電単価が安い石炭火力の新増設をやりやすくするのが狙いだ。しかし、原発再稼働の可能性もある中、数年かかる建設計画は立てにくく、1000億円超の建設コストもネックになっている。新増設が進むかは未知数だ。【浜中慎哉】

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 「環境アセスがわかりやすくなり、大変ありがたい」。東京電力の広瀬直己社長は4月30日の記者会見で、アセス新基準を歓迎した。

 石炭火力のメリットは、1キロワット時当たり約4円という発電単価の安さだ。

 東日本大震災以降、電力各社は液化天然ガス(LNG)火力と石油火力を拡大させたが、LNGの発電単価は石炭の2倍超の11円、石油は4倍の16円と高く、電力会社の経営を圧迫。13年3月期連結決算は、北陸と沖縄を除く大手8社が最終赤字を計上した。

 LNGや石油の比率を落とし、石炭を増やせば、燃料費を削減できる。東電は大型原発2基分に相当する260万キロワットの電力を他社から調達するための入札を実施中だが、調達分の燃料がすべて石炭になれば、すべて石油の場合に比べ、燃料費は年間約1750億円安くなる。

 新基準では、運転中の最新鋭の石炭火力以上の環境整備を求めており、基準となるのが、Jパワー(電源開発)の磯子発電所(横浜市)。従来の火力発電所と比べ、二酸化炭素(CO2)排出量は2割カットでき、酸性雨の原因となる硫黄酸化物も95%以上除去可能だ。仮に米国と中国とインドの全ての石炭火力発電所を磯子並みの施設にすれば、日本の年間排出量より多い14億トンものCO2排出量を削減できるほど。日本が誇る高性能技術は、環境ニーズが高まるアジア新興国などへのインフラ輸出で需要が見込める。

 電力会社にとっては、すでに確立した「磯子並み」の環境性能を備えればいいという条件は「高くないハードル」(電力大手)。経済産業省幹部は「現在のLNG頼みは安定に欠ける。将来は石炭とLNGが同等の規模になっていくのが理想」と話し、今後、他の大手電力や独立発電事業者(IPP)などで、新増設の動きが活発化することを期待する。

 ただ、原発再稼働の進展次第では、燃料コスト増も解消され、石炭火力の新増設の必要性そのものが薄れる可能性がある。新増設には数年の期間と1000億円超の建設コストがかかり、日本総研創発戦略センターの井熊均所長は「原発の再稼働が見えない限り、石炭火力の稼働計画も立てにくい。電力会社は今後、原発の安全対策費用がかさみ、大型投資をする余裕はない」と指摘する。

 また、石炭火力のCO2排出量は、最新鋭の磯子でもLNG火力の1・8倍に上る。東電の入札分だけでも日本の排出量が1%増えるとされる。新基準では、電力業界全体で排出量を抑制する枠組みも同時に設けられたが、どのぐらい抑制するかなど具体策の検討はこれからの課題だ。


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