もしラウルがFC東京に来たら

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 Jリーグ開幕をおよそ1カ月半後に控え、サッカーファンの胸を躍らせる驚きのニュースが一部メディアで報じられた。

「FC東京が、元スペイン代表、ラウルの獲得に動く――」

 ご存知のとおり、昨年5月まで内田篤人(シャルケ/ドイツ)のチームメイトだったラウルは、現在カタールのアル・サッドに所属。そのカタールリーグはちょうどオフシーズンを終え、1月22日にリーグ後半戦がスタートしたばかりだ。

 そして、キャプテンマークを腕に巻いたラウルは、その日の試合で1ゴール1アシストの活躍を見せ、自らの決勝ゴールでチームを勝利に導いている。数々のスペインサッカー史を塗り替えてきたスーパースターの実力は、まだまだ衰えていないようだ。

 もちろん、そんな世界的ビッグネームがJリーグでプレイするかどうかはまだわからない。何より、中東マネーを上回るジャパンマネーが用意できるか、という大きなハードルがある。

 しかしながら、仮にこの移籍が実現したならば、それは、FC東京の名が世界中に知れ渡るようなビッグニュースになるはずだ。同時に、これまでのJリーグの歴史の中では、ジーコやストイコビッチ以来の超大物がJリーグの舞台でプレイすることになる。

 本名ラウル・ゴンサーレス・ブランコ、35歳。

 1977年6月27日、スペインの首都マドリードに生まれたラウルが、スター選手がひしめくレアル・マドリードで、リーガ最年少出場記録となる17歳4カ月でプロデビューを果たしたのは、1994年10月29日(対サラゴサ戦)のこと。プロ生活は、かれこれ19シーズン目を迎えたことになる。

 しかも、その中身が濃密だ。まず、レアル・マドリードで過ごした16年間に残した記録は、公式戦741試合出場、323ゴール。通算ゴール数はレアル・マドリード史上最高記録として刻まれている。また、内田とともに2シーズンに渡ってプレイしたシャルケ時代も含めると、チャンピオンズリーグで通算71ゴールをマークし、これは同大会の最多記録となる(2位はメッシの56ゴール※1月24日現在)。

 リーガ・エスパニョーラだけの成績を見ても、出場550試合はリーガ歴代2位(1位はバルセロナやバレンシアで活躍した名GKのアンドニ・スビサレータの622試合)。228ゴールは歴代1位だ(2位はメッシの198ゴール※1月24日現在)。

 ラウルが代表から離れた直後にスペイン代表の黄金時代が到来したことは不運だったが、レアル・マドリードやシャルケで数々のタイトルを獲得するなど、近代サッカー史で最も成功を収めたストライカーであることは間違いない。

 もっとも、ラウルの凄さはゴール記録だけではない。人間性が素晴らしく、常に周りから尊敬される存在なのだ。最大の理由は、その徹底したプロフェッショナリズムにある。

 例えば、毎日の練習はもちろん、遠征先でも時間は厳守。遅刻とは無縁だ。練習に臨む姿勢もプロそのもので、手抜きは一切ない。デビュー以来、ほとんど大きな故障をしたことがないのは、こうした自己管理を徹底し続けたことの証だ。

 また、並外れたリーダーシップの持ち主で、長きに渡ってレアル・マドリードとスペイン代表のキャプテンを務めた実績を持つ。特にレアル・マドリードでは、ジダン、ベッカム、ロナウド、フィーゴら各国のスター選手を擁して「銀河系」と称されたチームまでもまとめ上げた。

 試合後、ラウルはいちばん最後にロッカールームを出て、最後にバスに乗る。それは、チーム内に何が起こっているのかをすべて把握するためであり、キャプテンとして最後までメディア対応をしていたからだった。その責任感の強さは、辛口で知られるスペインのメディアから「一家の主のようだ」と称賛を浴びていたほどである。

 その姿を間近で見てきた内田も、「本当に素晴らしい選手。リスペクトしている」と、ラウルのサッカーに対する姿勢を事あるごとに称えてきた。そして、わずか2シーズンのプレイにもかかわらず、ラウルがつけた背番号「7」がシャルケの永久欠番になったことこそ、ラウルのパーソナリティーを物語るエピソードと言えるだろう。

 そんなラウルがFC東京、引いては日本サッカー界にもたらす効果は計り知れない。日本にいながらして世界最高のお手本が身近に存在すれば、FC東京というクラブ全体の空気も一変するだろう。勝者のメンタリティーも、確実に浸透する。

 もちろん、ピッチ上でもその効果はすぐに現れるはずだ。とりわけ、ラウルはボックス内の狭いスペースでゴールを決めることが多いので、石川直宏のクロスは相性が良さそうだ。相手の裏を突いてパスをもらう動きも得意とするため、今季大宮アルディージャから獲得した東慶悟のスルーパスもより生きてくるだろう。しかも、サイドハーフやトップ下でもプレイできるので、ルーカスとも共存できる。ダイレクトパスを駆使した超攻撃サッカーを標ぼうするポポヴィッチ監督としたら、喉から手が出るほど欲しい戦力に違いない。

 そのうえ、ラウルはこれまでほとんどスランプなくゴールを量産し続けており、カタールでもすでに13試合で6ゴールを記録。Jリーグでも20ゴール前後は保障されたようなもので、昨季のFC東京の得点数にそれをプラスすればリーグトップタイとなる。FC東京初のリーグ優勝も夢ではない。

 とにかく、想像しただけでもワクワクする話である。

 FC東京幹部の口から、本人が日本でプレイする意向があるというコメントも出ているようだが、はたしてこの移籍は実現するのか。カタールの移籍市場はヨーロッパのそれと異なるので、1月末というリミットはない。Jリーグの移籍期限となる3月末まで、じっくり腰を据えて交渉を進めてもらいたいものである。


中山淳●文 textbyNakayamaAtsushi


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